【特徴と対策】「最近の新人は…」と愚痴る前に
「最近の新人は・・・」 というセリフは職場でよく耳にするフレーズかと思います。
「・・・」の後には、決まってネガティブなセリフ(=愚痴)が続きます。
仕事に対する意欲が感じられない。地味で基本的な仕事をやりたがらない。当事者意識が低く、指示待ち。言われたことしかやらない。ビジネスマナーもわかっていない云々。
こんな愚痴が出るのは、新人本人が悪いからでしょうか?今回は、「最近の新人は・・・」とつい言ってしまう原因と、上手に付き合うコツをお伝えします。
■ 新人にとっての「アタリマエ」を知る
「最近の新人は・・・」という愚痴の多くは、上の世代の人が当たり前と思っていることに対して、下の世代の人達が違った価値観・考え方をすることに対して発せられるフレーズです。
当たり前と思っている価値観・考え方の多くは、その世代が育ってきた社会環境に大きな影響を受けています。では、昨今の若者世代の生まれ育った社会環境には、どのようなものがあるのでしょうか?
代表的なキーワードを3つあげます。
1. コミュニケーション手段の変化
幼少期から身近に携帯電話があり、日常生活の中ではスマホ、ソーシャルネットワークを通じたコミュニケーションがアタリマエ。
嫌な人とはコミュニケーションをとらずに、自分が都合の良いコミュニティで過ごすことができ、人間関係で我慢する・不条理に対処するといったことを、昔と比べると避けることが可能な中で育っています。
また、何か調べたい時にはインターネットで検索すればほとんど解決。情報ツールを器用に使いこなします。
わからないことを上の世代や知見を持った人に直接聞くという経験はあまりしてこなかったと思います。新人が仕事中にわからないことがあってもなかなか質問してこないことに対して、上司世代は「わからないなら聞いてくれれば早いのにな…」と、もどかしい思いをすることも多いのではないでしょうか。
2.ナンバーワンよりオンリーワン教育
いわゆる、ゆとり教育を受けてきた世代です。
「自分らしさを活かす」ことが大事であり「一番である必要はない」という価値観が重視された世代であるということです。徒競走でも順位をつけられることはなく、競争を経験してきていない世代だといえます。
3.長期不況
1990年代前半に生まれ、バブル崩壊後の長期不況下で育ってきました。経済環境は不安定で、社会への期待は薄く現実志向が強まっています。
日本生産性本部の平成26年度新入社員「働くことの意識」調査※でも、「新入社員のほどほど指向がさらに強まる」といった結果がでているようです。
※http://activity.jpc-net.jp/detail/lrw/activity001412/attached.pdf
このように俯瞰してみると、若者をマネジメントの立場として迎え入れる40代前後の世代とは大きく異なっていることがわかると思います。
携帯電話の普及していない時代に育ち、コミュニケーションは直接とるしかない、順位づけは当たり前、バブル期に夢と希望にあふれる未来を描いていた、そんな上司世代とは、まったく異なる育ち方をしているのです。
前提となる価値観が異なるからこそ、異質に見えるわけです。まずは、異質は悪いことではなく、その世代の特徴として理解して受け容れるというスタンスが大事でしょう。
■ 足りない「現実対峙力」
とはいえ、このような社会環境の変化の中育ってきた若者が企業人になると、受け入れる企業側の立場から見て問題になることがあります。
それは、企業人として社会に出る前に経験していて欲しいと思われる我慢する経験、叱られる経験、失敗する経験、挫折する経験をしないまま社会に出ているということです。
リクルートマネジメントソリューションズの若手社員の定着・戦力化の実態調査によると、そのような経験が不足した結果、「現実対峙力」が低下している。
現実対峙力とは、厳しい環境下でも現実を直視し、逃げずに向き合い、何とか状況を打破しようとする力のことです。 現実対峙力は多くの企業人にとって必要な力であり、とりわけ新人にとっては、新たな環境下に素早く適応し、成長していくうえでは大変重要な力です。
しかし、現実対峙力不足は、若者が怠けていたせいかというと、そうではありません。若者のせいにするのではなく、社会全体の問題として捉え、まずは向き合う姿勢が大事です。
■ イマドキの新人の「強み」を知り、上手に関わる
一方で兆しもあります。成長したいという欲求は持っています。まじめで素直、社会に貢献したい、会社の役に立ちたいと思っている若者が多いのです。
リクルートキャリアで行った大学生の就職活動に関する調査の「働く上で大切にしたい価値観」の上位3位以内に「貢献(46.5%)」「成長(25.4%)」が含まれています(n=1009)。「最近の新人は物足りない・・・」と諦めているよりは、このような兆しを活かすという視点を持って新人に向き合うことが大変重要だと思います。
では、どうすればいいのか?「周囲から新人に歩み寄る」のです。
たとえば、一か月間は、毎日仕事終わりの10分を新人のための相談タイムとしてわからないことがないか聞いてみる、元気がない様子の新人がいたら声をかける、得意な仕事や好きな仕事から任せて効力感を感じさせてから苦手なことにもチャレンジさせる、など些細なことで構いません。
実際に、離職が問題になっていたある不動産業界の企業では、上司から新人に頻繁に声掛けをするようになってから、離職率が15%以上も下がったのです。
「そんなことまでしないといけないのか・・・」そのような声が聞こえてきそうですが、これがずっと続くわけではありません。真面目で、貢献したい、成長したい、仕事ができるようになりたいという想いが強いので、最初に手をかけて新人が自ら動けるきっかけをつくってあげれば、あとは自分で立ち上がっていく可能性が、ぐっと高まります。
今後も社会環境はめまぐるしく変わるでしょう。それによって、今後企業人になる若者の価値観も大きく変わっていきます。また、一方で企業側の受入環境にも大きな変化が起こっていることも忘れてはならないでしょう。両者に起きている変化を踏まえて、その時代にあわせた若者との関わり方を模索していくことが肝要です。
■ まとめ
今回は、いわゆる「最近の新人」の特徴と上手に関わるためのコツをお伝えしました。ポイントは下記の2点です。
- 上司世代とは育った環境が違うため、アタリマエの価値観が全く異なる。
それを悪いことではなく、特徴として受け容れる。 - 実は「成長意欲・貢献意欲」が高い世代。この強みを兆しとして捉え、上司・周囲から歩み寄っていくことが有効。